町工場のホームページ集客実例

町工場のホームページ集客実例

ご相談内容

今回ご紹介するのは、佐賀県内で精密切削加工を手がける町工場様の事例です。創業から数十年、マシニングセンタや複合旋盤を揃え、現場には経験豊富な職人が揃っています。技術力には確かな自信がある。しかし、ここ数年で売上構成に危機感を抱くようになりました。

ご相談の内容を整理すると、次のようなものでした。

  • 売上の大半が長年付き合いのある商社経由の下請け仕事で、単価決定権がない
  • 取引先の海外生産移管や発注ロット減により、受注量が年々じわじわ減っている
  • 新規の引き合いがほとんどなく、特に大手メーカーから直接声がかかることはない
  • 会社のホームページはあるが、会社概要と設備一覧を並べただけで、「何ができる工場なのか」が外から見えない
  • 営業マンはおらず、社長と工場長が現場と経営を兼任しているため、攻めの営業に割ける時間はない

ご相談の言葉を借りれば、「技術はあるのに、見つけてもらえない」という状態です。これは佐賀県内に限らず、全国の町工場が共通して抱える課題でもあります。

課題の整理

課題1: 「何が作れる会社か」が外から見えない

BtoBの製造業における発注プロセスでは、調達担当者や技術者が「この素材でこの形状を、この公差で作れる会社はないか」とインターネットで検索することが一般的になっています。特に試作段階や、既存サプライヤーで対応できない難加工品を探す場面では、この傾向が顕著です。

ところが、町工場のホームページの多くは「代表挨拶」「沿革」「設備一覧」「アクセス」という構成で止まっています。設備に5軸マシニングセンタを保有していることは書いてあっても、その機械で実際に何をどこまでの精度で作れるのかは書かれていません。これでは検索にかからず、仮に偶然訪れた担当者がいても、技術力を判断できず離脱してしまいます。

課題2: 受注案件はほとんど公開できない

町工場の実績紹介が難しいのは、仕事のほとんどに守秘義務契約(NDA)がかかっているためです。どこの部品を、どんな図面で、どんな精度で作ったか——これらは発注元の競争力そのものであり、公開できない情報がほとんどです。

結果として、「うちは精密加工ができます」という抽象的な訴求にとどまり、具体的な技術の裏付けを示せない。ホームページが会社案内で終わってしまう構造的な理由がここにあります。

課題3: 営業に割ける人員も時間もない

現場を回しながら経営も担う町工場では、Web施策のために新しく人を雇うことも、外部に長期で発信代行を委ねることも現実的ではありません。Web制作会社に記事を書いてもらえば一時的にサイトは充実しますが、それは工場の言葉ではないし、続きません。

継続的に発信していくためには、工場の人自身が書ける仕組みを作る必要があります。ただし、現場の方に「ブログを書いてください」といきなりお願いしても、何を書けばいいのか、どう書けばいいのか、手が止まってしまいます。

施策: 工場の人が書ける仕組みを作る

私たちアルラボがご提案したのは、Web屋が代行して派手に発信する方向ではなく、工場の方が自分たちで書き続けられる仕組みを整えるという方針でした。

施策1: 公開できる題材を「自社でやってみた加工」に絞る

受注案件の大半が守秘義務で公開できない以上、公開できるのは受注前から工場の中にあるものに限られます。具体的には次のようなものです。

  • 社内で試しに削ってみたサンプル
  • 新人教育や腕試しで作った部品
  • 展示会用に制作したデモピース
  • 公開の許可が取れた過去の受注事例(匿名化した形で)
  • 工場内で日常的に使っている自作の治具

これらはNDAの制約がなく、写真を撮って加工の内容を説明しても問題ありません。「仕事の紹介ではなく、自社でやってみたことの記録」という位置づけです。

施策2: カスタムフィールドで「何を書けばいいか」を固定化する

工場の方がブログを書くうえで最大の障害になるのは、「何をどこまで書けばいいかわからない」という迷いです。この迷いをなくすため、WordPressのカスタムフィールド機能を使って、事例記事に入力する項目をあらかじめ決めておきました。

用意した入力欄は次のとおりです。

  • 加工したものの名前(短いタイトル)
  • 写真(1〜3枚、スマホで撮ったもので可)
  • 使った素材
  • 使った機械・工具
  • 加工の簡単な手順
  • 難しかったこと、工夫したこと
  • こんな業界で使えそう、という想定

この形式にしたことで、書き手は空白の画面に向かう必要がなくなります。項目に沿って、知っていることを書くだけで、1本の事例記事になる構造です。

施策3: 書き方のルールを極力シンプルにする

文章の書き方についても、守ってほしいルールを必要最小限に絞りました。

  • 専門用語が出てきたら、そのすぐ後ろに一言で言い換えを添える
  • 一文は短く、句点で区切る
  • カッコ良く書こうとしない。ふだん現場で話している言葉をそのまま書く
  • 写真があれば、文章は短くても構わない

「綺麗な文章を書かなくていい」と明示したことで、書き始めるハードルが下がりました。事例記事は論文ではなく、技術者から技術者へのメモのようなものです。装飾を削って、中身だけ伝われば十分です。

施策4: 即効性はないことを事前に合意する

Web施策でクライアントとの間にズレが生まれる最大の原因は、効果が出るまでの時間の認識が合っていないことです。今回の施策は、始めた翌月に問い合わせが殺到するような種類のものではありません。

むしろ、最初の数ヶ月は何も起きないのが普通です。記事を1本書いただけでは検索結果にもほとんど影響しません。10本、20本と積み重ねて初めて、特定のキーワードでGoogleに認識され始めます。この前提を施策開始前に明確にお伝えし、合意したうえで始めました。

具体的にお伝えしたのは次のような内容です。

  • 最初の3ヶ月は、ほぼ反応は出ません
  • 半年経った頃から、検索経由の訪問が少しずつ増え始めます
  • 1年後には、記事が「資産」として働き始め、書くのをやめても集客が続く状態に近づきます
  • 書けば書くほど雪だるま式に効いてきますが、書かない期間が長いと止まります

この「資産になる」という感覚を早い段階で共有できたことが、施策を継続する力になりました。

施策5: Googleビジネスプロフィール(GBP)の整備

製造業はローカル検索に関係ないと思われがちですが、実際には「佐賀 精密加工」「佐賀県 切削加工」といった地域+業種の検索は存在します。また、既存の取引先が「あの工場、正式名称なんだったか」と検索するケースでも、GBPの情報は重要になります。

さらに注目すべき点として、「佐賀 精密加工」のような製造業系キーワードでの検索結果に表示されるマップの表示範囲は、飲食店や美容室などBtoC業種に比べて格段に広いという特性があります。飲食店の「佐賀市 ラーメン」であればマップに表示されるのは半径数キロ圏内の店舗ですが、「佐賀 精密加工」では佐賀県全域、場合によっては福岡県南部まで含めた広域がマップに表示されます。

これは、BtoB製造業を探すユーザーが飲食店のように近距離を求めていないことをGoogle側も理解しており、検索意図に合わせて表示範囲を自動的に広げているためです。つまり、同じGBP整備でも、BtoB製造業ではより広い商圏に対して露出できるという大きなメリットがあります。佐賀県内の工場であっても、福岡や久留米の発注担当者の検索結果に表示される可能性が十分にあるということです。

工場外観・内観・設備の写真を追加し、営業時間・対応可能な加工を整備しました。GBPは一度整備すれば放置できる性質のものなので、忙しい工場にとっては費用対効果の高い施策です。

施策6: 問い合わせフォームの整備

事例記事を見て興味を持った方が、実際に問い合わせに進めるように、フォームに次の機能を追加しました。

  • 図面ファイル(PDF等)のアップロード対応
  • 秘密保持に関する明示的な記載
  • 自動返信メールでの受付確認

電話とFAXだけだった頃は、夜間や休日の検討が問い合わせにつながりませんでした。フォーム経由なら、担当者が時間のあるタイミングで図面を送れます。

結果

この施策は、始めてすぐに大きな成果が出るものではありません。事前に合意したとおり、最初の3ヶ月はほぼ反応がありませんでした。工場の方には「これで本当に効果が出るのか」という不安があったと思います。

変化が見え始めたのは、記事が10本を超えたあたりからです。

  • 半年経過時点で、検索経由のサイト訪問が施策前の数倍に増加
  • 「精密加工 〇〇」「佐賀 ○○(素材名)加工」といった地域 or 素材+業種のキーワードでの表示回数が増加
  • 問い合わせ件数は、施策前の月0〜1件から、月数件レベルへ
  • 問い合わせの中に、商社経由ではない、発注元企業からの直接の相談が混じり始めた

ロングテール検索で大手から見つけてもらえた

特に印象的だったのは、大手メーカーの技術者から直接問い合わせが入ったことです。その方は、探している加工に該当する素材名と加工内容を組み合わせた、かなり具体的な検索語でGoogleを検索し、工場の事例記事にたどり着いたとのことでした。

一般的なキーワードで上位を取ろうとすれば、大手のマッチングサイトや発信力の大きい企業サイトが立ちはだかります。しかし、素材と加工の具体的な組み合わせのようなロングテールと呼ばれるニッチな検索語では、競合がほとんどいません。工場の方が自分の言葉で書いた事例記事が、そのまま上位に表示されます。

検索した側にとっても、抽象的に「精密加工」と謳う会社より、自分が探している加工そのものを実際に手がけた記録が残っている工場のほうが、信頼して問い合わせできます。ロングテール検索は、工場にとっては「少数だが確度の高い問い合わせ」を連れてきてくれる導線になっていました。

数字としては派手ではありませんが、重要なのは書けば書くほど効きが強くなっていく実感を工場の方が持てたことです。最初は半信半疑で書いていた事例記事が、半年後には「来月もう2本書いておくよ」と自発的に出てくるようになりました。

また、書き手が工場の方であることの副次的な効果もありました。技術的な内容が正確で、現場の言葉で書かれているため、問い合わせをくださる方の質が高いのです。「御社の事例を見て、まさにこういう加工を探していた」という前提で連絡が来るため、最初のやりとりから話が早く進みます。

なぜ「シンプルな仕組み」が続くのか

書き手の負担を最小化する

Web施策が続かない最大の理由は、書き手の負担が大きすぎることです。記事1本に何時間もかかる設計だと、現場が忙しくなった瞬間に更新が止まります。今回の施策では、カスタムフィールドの項目に沿って書くだけ、写真はスマホで十分、装飾は不要という形にしたため、1本あたり30分〜1時間で書ける状態を作りました。

資産としての記事という感覚

書いた記事が積み重なり、検索経由で問い合わせが増えていく経験をすると、記事を書くことが「業務」ではなく「資産づくり」として実感できるようになります。今月書いた記事が来月、来年と検索され続け、問い合わせを連れてくる。この感覚が定着すると、施策は外部の働きかけなしに続くようになります。

E-E-A-Tという評価軸

Googleの検索評価において近年特に重視されているのがE-E-A-Tという考え方です。これはExperience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字を取ったものです。要するに、「実際にその分野を経験している人が、専門知識をもって発信しているか」を重視する考え方です。

工場の方が自分の言葉で、自分が削ったものについて書く記事は、まさにE-E-A-Tの「経験」と「専門性」そのものです。Web屋が代筆した綺麗な記事よりも、現場の人がスマホで撮った写真と素朴な文章のほうが、Googleの評価軸においても読み手にとっても価値が高いという構造になっています。

今後の課題

順調に進んでいる施策ですが、継続していく上では次のような課題があります。

  • 記事の更新頻度を維持するための、社内での担当者と時間の確保
  • 問い合わせ増加に伴う見積もり対応業務の効率化
  • 書きためた記事を、業種別・素材別にサイト内で整理し直していく作業
  • 問い合わせの傾向を見て、どういう記事が反応を取っているのかを定期的に振り返る機会

アルラボでは引き続き、発信の継続支援と、データをもとにした次の一手のご相談をご一緒させていただいています。

この記事を書いた人

直塚 一仁 代表取締役 / Webディレクター / プログラマー

佐賀市を拠点に、中小企業・個人事業主のWeb戦略を支援。ホームページ制作からSaaS開発、SEO対策、広告運用まで、デジタル領域をワンストップで手がける。「技術力×提案力」で地域ビジネスの成長を加速させることをミッションに、これまで多数のプロジェクトに携わる。