AIを使いこなせる人とそうでない人の違い

AIを使いこなせる人とそうでない人の違い

はじめに

業務で生成AIを使う場面が、ここ数年で大きく増えてまいりました。しかし同じツールを使っていても、得られる成果には人によって差が出ているのが実情です。今回は、AIを使いこなしている方とそうでない方の違いについて、現場で観察される傾向を整理してまいります。なお、本記事の内容は一般的に見られる傾向をまとめたものであり、すべての方に当てはまるものではない点を、あらかじめお断りいたします。

数字で見る日本の生成AI活用の現状

本論に入る前に、日本における生成AI活用の現状について、公的調査のデータをご紹介いたします。

個人利用は1年で約3倍、それでも他国に比べて低水準

総務省が2025年7月に公表した「令和7年版 情報通信白書」によると、2024年度に生成AIサービスを使ったことがあると回答した個人の割合は26.7%でした。2023年度の9.1%から1年で約3倍に増えています。一方で、同調査では中国が81.2%、米国が68.8%と報告されており、海外と比べると依然として低い水準にとどまっています。

年代別では20代が44.7%と最も高く、50代以上では20%を下回るなど、世代間で差が見られる結果となっております。

利用しない理由の最多は「使い方が分からない」

同じく総務省の調査では、生成AIを利用しない理由として「使い方が分からない」が48.3%で最多となりました。技術的な機能の問題ではなく、活用の仕方に関する知識・経験の不足が、利用拡大の壁になっていることが示唆されております。

企業では「導入したが効果が出ない」二極化が進行

PwC Japanグループが2025年に公表した「生成AIに関する実態調査2025春 5カ国比較」では、日本企業の生成AI活用状況は56%まで上昇したと報告されています。2023年春時点ではほぼゼロ、2024年春で43%だったことを踏まえると、導入のスピード自体は加速しているといえます。

ただし、活用効果については別の傾向が見られます。同調査で「期待を大きく上回る」と回答した日本企業は10%にとどまり、2024年春の9%からほぼ変わっていません。一方、同じ設問に対して米国企業は2024年春の33%から2025年春には45%へと伸びており、効果実感の面で差が広がっております。

PwCはこの状況について、活用が進んでいる企業と効果を出せていない企業の二極化が常態化しつつある、と分析しております。導入しているかどうかよりも、どう使っているかが成果を分けている、という見方ができそうです。

これらのデータを踏まえると、AI活用の差は「ツールを持っているかどうか」ではなく、「どう向き合っているか」によって生まれている可能性が高いと考えられます。以下、現場で観察される7つの傾向を順にご紹介いたします。

違いは「プロンプトの上手さ」だけではありません

AIを使いこなしている方とそうでない方の違いは、入力する文章の巧拙だけではないと考えられます。より本質的な違いは、AIを何者として扱っているかという認識の部分にあるようです。

1. AIに任せる範囲を決めている

AIを業務に取り入れている方の多くは、最初からすべてをAIに任せていません。たとえば、次のような役割分担をしているケースがよく見られます。

  • アイデア出しはAIに任せる
  • 事実確認は公式情報で行う
  • 判断基準はご自身が持つ
  • 最終的な仕上げと責任はご自身が負う

一方で、AIを十分に活用できていない方は、「AIに聞けば正解が出る」と過度に期待するか、逆に「AIは間違えるから使えない」と切り捨ててしまうか、両極端になる傾向があるようです。AIは正解を出す機械ではなく、思考・調査・整理・試作のスピードを上げる道具として捉えるほうが、現実に近いのではないかと考えられます。

2. 質問ではなく「発注」をしている

使いこなしている方の依頼の仕方は、質問というよりも発注書に近い形式になっていることが多いようです。

たとえば、「いい感じに書いて」「これどう思う?」「もっと良くして」といった依頼では、AIは前提を補完しきれず、期待とずれた回答を返す可能性が高くなります。

一方、以下のように条件を渡す依頼では、出力の精度が安定しやすくなる傾向があります。

  • 読み手は初心者の方
  • 誇大表現は使わない
  • 事実と推測を分けて記載する
  • 文字数は300字以内
  • 信頼感のある落ち着いた文章にする
  • 最後に改善点を3つ挙げる

つまり、何を出してほしいかだけでなく、どのような基準で出してほしいかまで指定することが、出力の質を左右する要因の一つになっていると考えられます。

3. 一発で完璧な回答を期待していない

AIを業務に取り入れている方の多くは、最初の回答だけで完成形を求めていません。

  • まず初稿を出させる
  • 気になる点を見つける
  • 修正条件を追加して再出力させる
  • 別案と比較する
  • 最後に一つに絞る

このような流れで使っているケースが多く見られます。最初の回答が思わしくないときに「使えない」と判断してしまうのは、もったいない使い方と言えるかもしれません。文章・企画・コードの下書き・画像生成のプロンプト・資料構成などは、反復して磨くことで完成度が上がる傾向があります。

4. AIの回答を分解して見ている

使いこなしている方は、AIの出力をそのまま受け取らず、内容を分解して確認しているように見受けられます。具体的には、次のような視点で見ているケースが多いようです。

  • 事実なのか、推測なのか
  • 意見なのか、一般論なのか
  • ご自身のケースに当てはまるのか
  • 根拠が示されているか
  • 表現だけが整っていて中身が薄くないか

AIは、誤った内容であっても自然な文章で書いてしまうことがある点は、広く知られております。文章が読みやすいからといって正しいとは限らないため、重要な判断の場面では「根拠」「一次情報」「不明点」を分けて確認する姿勢が求められます。

5. 自分の判断軸を持っている

AIに考えさせても、最終判断はご自身でしているケースが多いようです。たとえば、以下のような判断は、人間側の軸が必要になる場面と考えられます。

  • この文章がお客様に届くかどうか
  • このデザインに信頼感があるかどうか
  • この企画が現実的に運用できるかどうか
  • このコードが長期的な運用に耐えるかどうか
  • この表現が法的に問題ないかどうか

AIに判断軸まで委ねてしまうと、もっともらしいが浅い、一般論ばかり、現場感がない、目的に合わない、といった出力になりやすいと考えられます。

6. AIの得意・不得意を理解している

AIには、得意な領域と苦手な領域があります。一般的に、得意とされているのは次のような作業です。

  • 文章の整理や要約
  • たたき台の作成
  • アイデア出し
  • 比較表の作成
  • 言い換え
  • コードの下書き
  • 視点の追加

一方、現時点で苦手とされているのは次のような領域です。

  • 最新情報の正確な断定
  • 法律・医療・金融などの厳密な判断
  • 現場ごとの細かな事情の把握
  • 実在する事例の保証
  • 曖昧な指示からの正確な意図の読み取り

得意な領域でAIに走ってもらい、苦手な領域は人間や一次情報で補う、という使い分けが、現実的な活用方法と考えられます。

7. AIに考えさせる順番が整理されている

いきなり「正解を教えてください」と聞くのではなく、次のような順番で依頼するケースが多く見られます。

  • まず論点を整理してもらう
  • 判断基準を作ってもらう
  • 選択肢を出してもらう
  • メリット・デメリットを比較してもらう
  • 最後におすすめを出してもらう

順番を整えると、AIの出力は比較的安定する傾向があります。最初から結論だけを求めると、AIが前提を独自に補完してしまい、意図とずれた回答になりやすい点に注意が必要です。

株式会社アルラボの視点

当社では、佐賀県内の中小企業の皆さま向けに、AIを活用したマーケティング支援や業務改善のお手伝いをいたしております。実際の現場で感じるのは、AIは「導入すれば自動的に成果が出る道具」ではなく、「使い方次第で成果が大きく変わる道具」だという点です。これは前述のPwC調査が示す「効果の二極化」とも重なる感覚です。

そして経営者の方からよく伺うのは、「何から始めればよいかわからない」というお悩みです。総務省の調査で利用しない理由の最多が「使い方が分からない」であったことも、この実感を裏付けるものといえそうです。当社では、業務の中で繰り返し発生している作業のうち、画面の中で完結する作業を一つだけ選び、まずはご自身で試していただくところから始めることをおすすめしております。一度に多くを変えようとせず、小さく試して効果を確認しながら広げていく方法が、現場では定着しやすいと感じております。

まとめ

AIを使いこなしている方は、AIを「正解をくれる先生」としてではなく、「思考のスピードを上げるための作業パートナー」として扱っているように見受けられます。AIに任せる範囲を決め、条件を渡して依頼し、出力を検証し、最終判断はご自身で行う、という姿勢が共通しているように思います。

各種調査が示すとおり、生成AIの導入率は伸びていますが、効果を実感できている層とそうでない層の差は広がりつつあります。差を分けているのは、ツールそのものよりも、向き合い方の違いといえるのではないでしょうか。

AIの業務活用にご関心のある方、自社にどう取り入れればよいかお悩みの方は、お気軽に当社までご相談ください。

参考資料・出典

この記事を書いた人

直塚 一仁 代表取締役 / Webディレクター / プログラマー

佐賀市を拠点に、中小企業・個人事業主のWeb戦略を支援。ホームページ制作からSaaS開発、SEO対策、広告運用まで、デジタル領域をワンストップで手がける。「技術力×提案力」で地域ビジネスの成長を加速させることをミッションに、これまで多数のプロジェクトに携わる。