プラグインに頼りすぎるWordPress制作は、いつかクライアントに損害を与える
数年前に弊社管理から外れたWebサイトについて、先日、緊急の通知が届きました。
なぜ管理が外れたのに通知が来るかというと、管理者メールアドレスがそのままだったからです。こちらから再三変更をお願いしていたにもかかわらずそのままでした。そのおかげで今回の話題になったわけですが。
さて、そのサイトはWordPressで構築されていたもので、現在はすでに当社の管理範囲外です。
しかし通知の内容を確認してみると、サイトが正常に表示されず、画面にはWordPressのエラーがそのまま表示されている状態でした。
原因を見てみると、特定のプラグイン内にあるはずのファイルが見つからず、WordPress全体が処理を止めてしまっているというものでした。
つまり、簡単に言えば、プラグインの不具合またはファイル欠損によって、サイトそのものが表示されなくなっていたということです。
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数日経っても復旧しないという問題
一応気づいたからには知らせようと思い、広報責任者に連絡しました。すると相手からは「エンジニアに修正させます」との返事。これで解決かと思いきや、数日経っても、現在この記事を書いている時点でも未だ修正されていません。
もちろん、Webサイトに不具合が起きること自体は珍しいことではありません。
WordPress本体、テーマ、プラグイン、PHPのバージョン、サーバー環境など、Webサイトはさまざまな要素の上で動いています。
そのため、更新のタイミングやサーバー環境の変化によって、一時的にエラーが出ることはあります。
問題は、その後の対応です。
今回のように、プラグインの一部ファイルが見つからないだけであれば、通常は原因の切り分け自体はそこまで難しくありません。
- プラグインを一時的に無効化する。
- 該当プラグインを再インストールする。
- バックアップから復元する。
- 互換性を確認する。
- 本番環境にエラーをそのまま表示させないようにする。
こうした基本的な対応ができれば、少なくとも数日間もサイトが表示されないまま放置されるような事態は避けられるはずです。
にもかかわらず、数日経っても復旧していないのであれば、そこには明らかに保守管理側の知識不足・対応力不足があると言わざるを得ません。
本当の問題は「プラグイン」ではない
今回の件で本当に問題なのは、単にプラグインが壊れたことではありません。
問題は、特定のプラグインに依存しすぎた構造になっていたことです。
WordPressには便利なプラグインが数多く存在します。
お問い合わせフォーム、SEO、セキュリティ、スライダー、ショートコード、ページビルダーなど、プラグインを使えば短時間で多くの機能を追加できます。
しかし、便利だからといって何でもプラグインに頼ればよいわけではありません。
特に、サイトのレイアウトや重要な表示部分をプラグインに強く依存させると、そのプラグインが停止した瞬間にサイト全体の表示が崩れたり、最悪の場合は今回のようにサイトそのものが表示されなくなったりします。
これは単なる不具合ではなく、設計の問題です。
ちなみに、弊社が作成した時にはこのようなプラグインは導入していませんでした。おそらく管理が外れた後の担当者が導入したのでしょう。
弊社ではプラグインをほとんど使わない
当社では、WordPressを使う場合でも、必要以上にプラグインへ依存する構築は基本的に行いません。
もちろん、すべてのプラグインが悪いわけではありません。
信頼性が高く、保守されており、導入する意味が明確なプラグインであれば使うこともあります。
しかし、少しコードを書けば実装できるものまでプラグインで済ませる。
レイアウトやデザインの大部分をショートコード系プラグインに任せる。
中身を理解しないまま、便利そうだからと次々に追加する。
こうした構築は、後々のトラブルの原因になります。
プラグインは便利な道具ですが、道具に頼りすぎると、作り手自身の技術力が育ちません。
そして技術力のない制作者ほど、プラグインを増やすことで問題を解決しようとします。
その結果、見た目はそれなりに整っていても、中身は壊れやすく、更新に弱く、保守しづらいWebサイトになってしまいます。
「自称エンジニア」が増えているみたいだぞ!
近年は、WordPressの管理画面やページビルダーを触れるだけで、Web制作者やエンジニアを名乗る人も増えました。
もちろん、ノーコード・ローコードのツールを活用すること自体は悪いことではありません。
問題は、仕組みを理解しないまま、作れているつもりになっていることです。
HTML、CSS、JavaScript、PHP、サーバー、データベース、セキュリティ、バックアップ、エラー対応。
Webサイトを事業用として運用する以上、最低限理解しておくべきことがあります。
それらを理解せず、ただプラグインを入れて、テーマを選んで、画面上で設定するだけ。
それで「Webサイトを作れます」「保守できます」と名乗ってしまう。
そのしわ寄せを受けるのは、最終的にはクライアントです。
AIを使った「バイブコーディング」にも同じ危うさがある
最近では、AIを使ってコードを書く、いわゆる「バイブコーディング」も広がっています。
AIに指示を出せば、HTML、CSS、JavaScript、PHP、WordPressのカスタマイズコードなども、それなりの形で生成できます。
これにより、以前よりも簡単にWebサイトやシステムを作れるようになったのは確かです。
しかし、ここにも大きな落とし穴があります。
それは、使う側に基本的な知識がないと、AIに主導権を握られてしまうということです。
AIは便利です。
しかし、AIが出したコードが正しいか、安全か、将来的に保守できるかまでは、最終的に人間が判断しなければなりません。
HTMLの構造が適切か。
CSSが無駄に複雑になっていないか。
JavaScriptに不要な処理が入っていないか。
PHPでセキュリティ上危険な書き方をしていないか。
WordPressの作法に合っているか。
エラーが出たときに、どこを直せばいいのか。
こうした基礎が分かっていないままAIに任せると、本人は「作れている」と思っていても、実際には中身を理解できていない状態になります。
これは、プラグインを入れることしかできない制作者と本質的には同じです。
プラグインに頼るだけの人は、プラグインが壊れたときに対応できません。
AIに頼るだけの人は、AIが出したコードが壊れたときに対応できません。
どちらも、自分で判断するための基礎がないという点では同じです。
AIは道具であって、責任を取ってくれる存在ではない
AIを使うこと自体が悪いわけではありません。
むしろ、正しく使えば制作スピードは上がりますし、調査や設計、コードのたたき台作成にも非常に役立ちます。
ただし、それはあくまで使う側に判断力がある場合です。
AIが出したものをそのまま貼り付ける。
エラーの意味も分からないまま修正を繰り返す。
なぜ動いたのか、なぜ壊れたのかを理解しない。
本番環境にそのまま反映してしまう。
これでは、プロの仕事とは言えません。
AIはコードを書いてくれるかもしれません。
しかし、そのコードによってサイトが壊れたり、セキュリティリスクが生まれたり、クライアントに損害が出たりしても、責任を取るのはAIではありません。
責任を取るのは、制作を請け負った人間です。
だからこそ、これからのWeb制作者には、AIを使いこなす力と同時に、AIに振り回されないための基礎知識が必要です。
AIを使えば誰でも作れる時代になったように見えます。
しかし実際には、基礎がある人とない人の差が、よりはっきり出る時代になったとも言えます。
クライアントには制作者の能力が見えにくい
Web制作の難しいところは、クライアント側から制作者の技術力が見えにくいことです。
見た目がきれいであれば、きちんと作られているように見えます。
管理画面で簡単に編集できれば、便利なサイトに見えます。
制作時に問題なく表示されていれば、それで安心してしまうこともあります。
しかし、本当に重要なのは公開後です。
- 更新に耐えられるか。
- プラグイン停止時に復旧できるか。
- サーバー環境の変化に対応できるか。
- エラーが出たときに原因を切り分けられるか。
- バックアップから安全に戻せるか。
- 不要なプラグインに依存していないか。
こうした部分こそ、プロとしての実力が問われます。
ところが、クライアントにはその違いが分かりにくい。
だからこそ、制作者側には誠実さと最低限の技術力が必要です。
WordPressも進化している
WordPressは常に進化しています。
2026年5月20日には、WordPress 7.0のリリースが予定されていたことが公式の開発スケジュールでも示されています。WordPressは今後も、ブロックエディター、管理画面、ワークフロー、開発環境などを含めて変化し続けます。
つまり、昔のやり方のままでは通用しない場面が増えていきます。
WordPressだけではありません。
現在は、静的サイト、ヘッドレスCMS、ノーコードツール、フロントエンドフレームワーク、AIを活用した開発など、Webサイト構築の方法は多様化しています。
選択肢が増えたからこそ、制作者にはより基本的な理解が求められます。
「とりあえずWordPress」「とりあえずプラグイン」「とりあえずページビルダー」
このような考え方では、変化の早いWebの世界についていけません。
プロなら、最低限知っておくべきことがある
プロとして━━━━
ファブルみたいな書き方になってしまいましたが、
Web制作において、すべてを自作する必要はありません。
便利なツールを使うことも、効率化することも大切です。
しかし、プロとして仕事を受ける以上、最低限知っておくべきことがあります。
- なぜそのプラグインを使うのか。
- そのプラグインが止まったらどうなるのか。
- 代替手段はあるのか。
- 更新時にどのようなリスクがあるのか。
- 本番環境でエラーが出たとき、どう復旧するのか。
- クライアントの事業にどのような影響があるのか。
こうしたことを考えずにWebサイトを構築するのは、非常に危険です。
Webサイトは、ただ表示されればよいものではありません。
企業や店舗にとっては、集客・信頼・売上に関わる重要な資産です。
それを預かる立場であるならば、制作者はもっと責任を持つべきです。
プラグインは便利だが、依存しすぎてはいけない
今回のようなトラブルを見ると、改めて感じます。
プラグインは便利です。
しかし、プラグインに頼りすぎたWebサイトは脆いです。
本来、制作者が理解して設計すべき部分までプラグイン任せにしてしまうと、問題が起きたときに対応できません。
そして、その被害を受けるのは制作者ではなく、クライアントです。
Webサイト制作において大切なのは、派手な機能を詰め込むことではありません。
きれいな見た目だけを整えることでもありません。
- 長く安全に運用できること。
- トラブル時に復旧できること。
- 必要以上に複雑にしないこと。
- 制作者自身が中身を理解していること。
それこそが、本当に価値のあるWeb制作だと考えています。
まとめ
WordPressは便利なCMSです。
プラグインも、正しく使えば非常に有効な道具です。
しかし、道具に頼りすぎる制作は危険です。
特に、制作者自身が仕組みを理解せず、プラグインを入れることでしか対応できない場合、そのサイトは将来的に大きなリスクを抱えることになります。
Webサイトは作って終わりではありません。
公開後も安全に運用できてこそ、本当の意味で価値のあるWebサイトであり、エンジニアとして従事し、お客様から対価をいただくのであれば(もちろん社内エンジニアもだぞ!)プロとして最低限のことはできなければいけません。
以上、偉そうなおじさんからの一言でした。