自社の強みの見つけ方|7つのステップで「選ばれる理由」を言葉にする方法
「うちの強みは何ですか?」
この質問にすぐ答えられる会社は、実はそう多くありません。
「品質が良い」「対応が丁寧」「実績がある」——こうした答えは出てくるものの、それが本当に他社と違うのか、お客さまにとって決め手になっているのかと聞かれると、自信を持って答えられない方が多いのではないでしょうか。
強みがわからないと、ホームページの内容がぼんやりしたり、営業トークに説得力が出なかったり、広告を出しても反応が薄かったりと、いろいろな場面で困ることになります。
この記事では、業種や会社の規模に関係なく使える「自社の強みの見つけ方」を7つのステップで解説します。専門的なマーケティングの知識がなくても、順番に取り組めば自社の強みが言葉にできるようになります。
目次
そもそも「強み」とは何か
まず「強み」という言葉の意味を整理しておきましょう。
ビジネスにおける強みとは、お客さまが自社を選ぶ理由になっているものです。「自分たちが得意なこと」ではなく、「お客さまにとって価値があり、かつ他社にはない(または弱い)もの」が本当の強みです。
ここが大事なポイントです。いくら自社が得意でも、お客さまがそこに価値を感じていなければ、それは強みとは言えません。逆に、自分たちが「普通のこと」だと思っていても、お客さまにとってはありがたいこと、他社にはできていないことであれば、それは立派な強みです。
つまり強みは「自社目線」ではなく「お客さま目線」で見つけるものです。この前提を押さえた上で、具体的な見つけ方に進みましょう。
なぜ強みを見つけることが重要なのか
強みを明確にすると、ビジネスのあらゆる場面がうまく回り始めます。
集客がしやすくなる。 ホームページや広告で「うちはこういう会社です」「こういう悩みを持つ方に最適です」と明確に伝えられるようになります。何でもできますというメッセージよりも、特定の強みを打ち出した方が、必要としている人に届きやすくなります。
価格競争から抜け出せる。 強みが不明確だと「安いかどうか」だけで比較されてしまいます。しかし「この会社にしかできないこと」が明確なら、多少高くてもお客さまは選んでくれます。
社内の方向性が揃う。 強みが言語化されていると、「うちは何を大切にしている会社なのか」が社内で共有されます。採用、教育、新サービス開発など、あらゆる判断の軸になります。
営業がラクになる。 「なぜうちに頼むべきか」を具体的に説明できるようになるため、営業トークに説得力が生まれ、お客さまの意思決定がスムーズになります。
ステップ1:お客さまに「選んだ理由」を聞く
強みを見つける最も確実な方法は、お客さまに直接聞くことです。これが最強の手段でありながら、最もやっていない会社が多い方法でもあります。
何を聞くか
お客さまに対して、次のような質問をしてみてください。
「いくつかの会社を検討されたと思いますが、最終的にうちを選んでくださった決め手は何でしたか?」
「もし知り合いにうちを紹介するとしたら、どんなふうに説明しますか?」
「うちとの取引で、一番助かっている部分はどこですか?」
「もしうちがなくなったら、一番困ることは何ですか?」
どんな発見があるか
多くの場合、自社が思っている強みと、お客さまが感じている強みにはズレがあります。
たとえば「技術力の高さ」が強みだと思っていたのに、お客さまの答えは「いつも返事が早くて安心する」だった。「デザインの質」が売りだと信じていたのに、「細かい要望を嫌がらずに聞いてくれるところ」が決め手だった。こういうズレはよくあります。
自社にとっては当たり前すぎて気づかないことが、お客さまにとっては大きな価値になっていることは珍しくありません。だからこそ、お客さまの声を聞くことが一番の近道です。
直接聞けない場合の代替手段
対面やメールで直接聞くのが難しい場合は、以下の方法で代用できます。
Googleマップのクチコミを見返してみましょう。お客さまが自然に書いた言葉の中に、強みのヒントが隠れています。
過去にもらったお礼のメールやメッセージを読み返してみましょう。「助かりました」「ありがたかった」という部分に注目すると、何が評価されているかが見えてきます。
リピートしてくれているお客さまの共通点を探してみましょう。どんな業種の方が多いか、どんな相談内容が多いか。リピーターが集中している分野が、自社が最も価値を発揮できている分野です。
紹介で来てくれたお客さまの初回相談内容も参考になります。紹介元の方が「この会社はこういうところがいいよ」と伝えた内容が、そのまま自社の強みである可能性が高いからです。
最低でも3社分の声を集めれば、共通するキーワードが見えてくるはずです。
ステップ2:選ばれなかった理由からも学ぶ
受注した案件だけでなく、**失注した案件(選ばれなかった案件)**からも強みは見つかります。
失注理由を分析する
「価格が合わなかった」——これは裏を返すと、価格以外の部分では評価されていた可能性があります。つまり品質やサービス内容では勝っていたということです。
「実績が不足していた」——これは、実績がある分野では十分に戦えるということを意味します。
「大手のほうが安心だから」——これは、提案内容自体は良かったが、会社の規模で判断されたということかもしれません。
このように、失注理由の裏側に「自社が実は勝っている部分」が隠れています。
離れていったお客さまにも注目する
以前は取引があったのに離れていったお客さまがいる場合、その理由を把握しておくことも大切です。離脱の原因が「価格」なら、品質面での評価は高いはずです。「対応スピード」が原因なら、それ以外の部分が強みとして残っています。
失注や離脱のデータは、自社が勝負すべき土俵と、勝負しなくていい土俵を区別するのに役立ちます。
ステップ3:「自社でやらないとうまくいかないこと」を書き出す
日常の業務の中で、自社でやればスムーズにいくのに、外部に任せるとうまくいかないことはありませんか? これがまさに自社のコアコンピタンス(中核的な能力)です。
具体的な問いかけ
次の質問に対して、思いつく限り書き出してみてください。
「外注すると品質が下がったり、やり直しが発生すること」
「新人に任せるとうまくいかないが、ベテランならすぐにできること」
「お客さまから『ここまでやってくれるんですか?』と驚かれること」
「同業他社が苦手としている(またはやりたがらない)こと」
書き出す際のコツ
技術的なスキルだけでなく、仕事の進め方や姿勢も含めて考えてみてください。
たとえば「ヒアリングが丁寧で、お客さまの本当の課題を引き出せる」「企画から納品まで一人の担当者が一貫して対応する」「専門用語を使わず、わかりやすく説明できる」——こういった業務プロセス上の特徴も、十分に強みになります。
大事なのは「何をしているか」だけでなく「どのようにしているか」の部分です。同じサービスを提供していても、やり方が違えばお客さまの体験は全く異なります。
ステップ4:持っているものと、できることを分けて整理する
強みには2つの種類があります。ここを分けて考えると、整理がぐっとしやすくなります。
リソース(持っているもの)
会社が保有している資産や環境のことです。
たとえば、専門的な技術や知識を持つ人材。特定の業界との長い取引関係。独自に開発したツールやシステム。蓄積されたノウハウやマニュアル。特許や資格。立地の良さ。ブランド認知度。過去の実績データ。
こうした「すでに手元にあるもの」がリソースです。
ケイパビリティ(できること)
リソースを組み合わせることで生まれる、実行力や対応力のことです。
たとえば「営業力 × 技術力」で、お客さまの相談を受けてから試作品を1週間で出せる。「業界知識 × デザイン力」で、専門性の高い分野のコンテンツを正確かつわかりやすく作れる。「データ分析力 × 提案力」で、数字に基づいた改善提案ができる。
リソースを一つひとつ見ると、競合も同じものを持っている場合があります。しかし、組み合わせのパターンは会社ごとに違うため、真似されにくい独自の強みになります。
なぜ分けて考えるのか
リソースだけだと「うちには○○がある」で終わってしまいますが、ケイパビリティまで考えると「だから○○ができる」という話になります。お客さまにとって意味があるのは「何を持っているか」ではなく「何ができるか」のほうです。
リソースの一覧を作り、それらを掛け合わせることで「何が実現できるか」を考えると、自社ならではの強みが浮かび上がります。
ステップ5:競合と比べて違いを見つける
強みは相対的なものです。自社だけを見ていても「それが強みなのかどうか」は判断できません。競合と比べて初めて、違いがはっきりするのです。
比較の進め方
まず、お客さまが自社と比較しそうな会社を3~5社ピックアップします。同じ地域の同業者、同じ価格帯のサービス、同じターゲット層に向けた会社などが対象です。
次に、それぞれの会社について以下の項目を調べて、一覧表にまとめます。
サービスの内容と範囲。価格帯。ホームページで打ち出している強み(キャッチコピーや特徴の記載)。お客さまの声やクチコミでの評価。SNSの運用状況。対応エリアや対応時間。
見つけるべき3つのこと
自社にあって競合にないもの。 これが最もわかりやすい強みです。特定の技術、独自のサービス、対応可能な領域など。
競合が言っていないこと。 業界では当然でも、競合がホームページ等で明示していないことがあります。お客さまにとっては重要なのに、誰もアピールしていない領域があれば、そこを先に打ち出すだけで差別化になります。
競合が弱いと評価されているポイント。 競合のクチコミで「対応が遅い」「説明が不十分」「融通が利かない」といった不満がある場合、自社がそこをしっかりカバーできているなら、それは大きな強みです。
注意点
競合を調べるときに陥りがちなのが、「あの会社のほうがすごい」と落ち込んでしまうことです。しかし、ここでの目的は優劣をつけることではなく「違い」を見つけることです。大手には大手の、中小企業には中小企業の強みがあります。規模では負けても、対応の柔軟さやスピード、きめ細やかさで勝てる場面はたくさんあります。
ステップ6:本当に「使える強み」を見極める
ステップ1~5で強みの候補がいくつか出てきたら、次はそれが本当に使える強みかどうかを見極めます。ここで役に立つのがVRIO(ブリオ)分析というフレームワークです。
VRIOは4つの英単語の頭文字を取ったもので、強みの「質」を4段階で評価できます。
V:Value(価値) — お客さまにとって価値があるか?
いくら自社が得意でも、お客さまが「それは別にいらない」と思うなら強みとは言えません。お客さまの課題解決や満足度向上に直結しているかどうかを確認します。
たとえば「最新の機械を持っている」としても、お客さまが求めているのがスピードではなく丁寧さなら、その機械は強みにはなりません。
R:Rareness(めずらしさ) — 競合も同じことをやっていないか?
「対応が丁寧」「品質が良い」は多くの会社が言っています。もし競合も同じレベルでできていることなら、差別化の要素にはなりません。
ただし「当たり前のことを当たり前にやる」こと自体が実は珍しい業界もあります。クチコミで競合への不満がよく挙がっているなら、自社が当たり前にやっていることが希少な強みである可能性があります。
I:Inimitability(真似しにくさ) — 競合が簡単に真似できるか?
お金を出せばすぐに手に入るもの(新しいツールの導入など)は、いずれ競合も同じことをします。一方、長年かけて築いた信頼関係、独自のノウハウ、チーム全体に染み込んだ文化といったものは、簡単には真似できません。
真似しにくい強みは、長期的に使える武器になります。
O:Organization(体制) — その強みを活かせる仕組みがあるか?
強みがあっても、それを安定して発揮できる体制が整っていなければ意味がありません。特定の一人だけが持っているスキルに頼っている場合、その人がいなくなったら強みも消えてしまいます。
チーム全体で再現できる仕組み(マニュアル、教育制度、業務フローなど)があるかどうかが重要です。
VRIOの使い方のコツ
4つすべてを満たすものがあれば理想的ですが、現実にはなかなかありません。まずはV(価値)とR(めずらしさ)を満たしているものを見つけましょう。この2つがあれば、ホームページや営業資料で打ち出すポイントとして十分に使えます。
さらにI(真似しにくさ)まであれば、長期的な戦略の柱にできます。Oが不足している場合は、強みを仕組み化する取り組みを並行して進めればよいのです。
ステップ7:見つけた強みを「伝わる言葉」にする
強みが見つかっても、うまく表現できなければ意味がありません。最後のステップは、お客さまに伝わる言葉に変換することです。
数字にできるものは数字にする
あいまいな表現よりも、具体的な数字のほうが説得力は圧倒的に高くなります。
「対応が早い」→「お問い合わせから24時間以内にお返事します」
「実績が豊富」→「年間120件の対応実績」
「お客さまの満足度が高い」→「リピート率85%」
「長年の経験がある」→「創業から20年、累計500社との取引実績」
すべてを数字にする必要はありませんが、一つでも具体的な数字があると信頼感が大きく変わります。
お客さまの言葉を使う
ステップ1で集めたお客さまの声は、そのまま強みの表現として使えることがあります。
自社で考えた「高い技術力で課題を解決します」よりも、お客さまが実際に言った「他の会社に断られた案件を引き受けてもらえた」のほうが、リアルで伝わりやすいことがあります。
お客さまが使った言葉は、同じ立場の見込み客にも響きやすいのです。
「誰にとっての強みか」を明確にする
同じ強みでも、相手によって響き方は変わります。たとえば「小回りが利く」は、大企業にはあまり響きませんが、中小企業には大きな魅力です。「専門性が高い」は、その分野の人には安心感を与えますが、関係ない業界の人にはピンときません。
強みを伝えるときは、誰に向けて言っているのかを意識しましょう。ターゲットが明確であればあるほど、強みの訴求が刺さりやすくなります。
「強み」ではなく「お客さまのメリット」として伝える
「うちは○○が強みです」と言うよりも、「だからお客さまは○○できます」と言ったほうが伝わります。
「経験豊富なスタッフがいます」→「初めての方でも安心して任せていただけます」
「最新の設備を持っています」→「短い納期でも高品質な仕上がりをお届けできます」
強みそのものではなく、強みがあることでお客さまにどんないいことがあるのかを伝えるのがポイントです。
やってはいけない3つの落とし穴
強みを見つける際に、よくある失敗パターンも押さえておきましょう。
落とし穴1:自社の中だけで考えてしまう
会議室にこもって「うちの強みは何だろう」と議論しても、たいてい「品質が良い」「対応が丁寧」といったぼんやりした結論にしかなりません。自社の中だけで考えると、どうしても主観的になってしまいます。
お客さまの声、競合との比較、失注データなど、外部の情報を必ず取り入れることが重要です。
落とし穴2:強みを多く挙げすぎる
「うちの強みは10個あります」と言われても、お客さまの記憶には残りません。強みは最大でも3つまでに絞るのが効果的です。
すべてを打ち出そうとすると、結果的に何も印象に残らない「何でも屋」になってしまいます。絞ることで、かえってメッセージが強くなります。
落とし穴3:一度見つけて終わりにする
市場も競合も変化していきます。3年前は強みだったことが、今は競合も当たり前にやっているかもしれません。逆に、最近の取り組みが新しい強みになっている可能性もあります。
少なくとも半年に1回は見直しをして、強みが今でも有効かどうかを確認しましょう。
強みの見つけ方チェックリスト
最後に、この記事の内容をチェックリスト形式でまとめます。
ステップ1:お客さまに聞く
- お客さまに「選んだ理由」をヒアリングした(最低3社)
- クチコミやお礼メールから評価ポイントを抽出した
- リピーターや紹介客の共通点を確認した
ステップ2:失注から学ぶ
- 失注案件の理由を分析した
- 離脱した顧客の理由を把握した
- 失注理由の裏側にある「勝っている部分」を特定した
ステップ3:業務を棚卸しする
- 「外注すると品質が落ちること」を5つ以上書き出した
- 技術だけでなく、仕事の進め方や姿勢も含めた
ステップ4:リソースとケイパビリティを整理する
- 持っているもの(人材、技術、データ等)を一覧にした
- それらの組み合わせで「何ができるか」を考えた
ステップ5:競合と比較する
- 比較対象の競合を3~5社ピックアップした
- 自社にあって競合にないものを見つけた
- 競合が言っていないこと、弱いと評価されている点を確認した
ステップ6:VRIOで絞り込む
- 強み候補をVRIO(価値・めずらしさ・真似しにくさ・体制)で評価した
- 上位2〜3個に絞り込んだ
ステップ7:伝わる言葉にする
- 数字で表現できるものは数値化した
- お客さまの言葉を活用した
- 「お客さまにとってのメリット」として表現した
まとめ
自社の強みは、自分たちにとって「当たり前」になっていることの中に隠れています。だからこそ、お客さまの声を聞き、競合と比較し、客観的な視点で掘り起こす作業が必要です。
大切なのは、難しく考えすぎないこと。まずは「お客さまに選ばれた理由を3社に聞く」という一歩から始めてみてください。そこで出てきた言葉が、自社の強みを見つけるための最良の手がかりになります。
見つけた強みは、ホームページのメインメッセージ、広告のコピー、営業資料、採用ページなど、あらゆる場面で活用できます。強みが明確な会社は、お客さまに選ばれやすく、価格競争に巻き込まれにくく、社内の方向性も揃いやすくなります。
ぜひこの記事の7つのステップを参考に、自社だけの「選ばれる理由」を言語化してみてください。